お茶に関するあれこれ

身近にありながら、意外と知らないことが多いお茶。
貴方は、どのくらいお茶のことをご存知ですか?


お茶はかせの研究テーマ 恵比寿八十八(やそはち)
お茶の歴史と玉露の誕生 
「玉露」というお茶は、高級といわれています。それはなぜなのか、お茶の始まりから追ってみました。

1.茶のはじまり

私たちが毎日飲んでいる緑茶や烏龍茶、紅茶が作られるお茶の木の原産地は、中国南西部の雲南省、ミャンマー、ラオス、ベトナムが国境を接する辺りであろうと言われています。

喫茶の起源は、漢民族の手で飲み物としてかたちづけられたというのが一般的です。茶について示されている最も古い文献「僮約(トンユエ・どうやく)」(紀元前前59年)によると、前漢代(紀元前206年〜8年)に四川省の成都付近で利用されたとあります。その後、喫茶の風習は活発になり、四川を基点に長江を南下し、唐代(618年〜907年)には中国北部まで広まりました。

中国の茶は、唐代から明代(1368年〜1644年)までは、「団茶」という固められた茶でした。明代以降に姿を大きく変えて、現代私たちが飲んでいる葉茶となったのです。


2.中国から日本へ。日本の茶のはじまり。

先進的な中国文化への憧れを背景として、日本への茶の渡来は、大きくわけて2度ありました。1回目は、遣唐使(630-894年)によるもので、たくさんの文物とともに当時の喫茶文化が渡来しました。このとき渡来した茶は団茶でした。

2回目は、茶祖として名高い栄西禅師によるものでした。禅師は二度にわたる入宋後、わが国最初の茶書「喫茶養生記」(1211年頃)を著し、茶木の種をもたらしたという説が有名です。しかし、実は禅師が持ち帰った重要なものは種ではなく、わが国の「抹茶」の製法につながる製茶法であり、製茶器具の知識だったのです。禅師により伝えられた知識をもとに、日本独自の栽培法である覆下栽培(おおいしたさいばい)が生まれ、「抹茶」が生まれました。

日本で進化した緑色の茶の香味は、瞬く間に寺院や武士階級に広まり、利休の「侘び茶」にいたりました。そして、ついには欧米人をも魅了する世界に誇る茶道文化を形成していくのです。


3.玉露の誕生。

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玉露は、茶の旨味成分を最大限に高め、濃緑色で柔らかい茶葉にするため、新芽が出ると茶の木を、わらやむしろなどで覆って日光を遮る「覆下茶園(おおいしたちゃえん)」の茶葉で作られます。この栽培法は、宣教師として来日したロドリーゲスの著した「日本教会史」(1622年頃)にも書かれています。すでに江戸時代(1603年〜1867年)の前期には、覆下茶園は一般的な栽培法であったのですね。当時これらの覆下茶園から摘み取った茶葉は、碾茶(てんちゃ)と呼ばれ、すべて抹茶の原料として用いられていました。

この時代、抹茶の製造は宇治茶師と呼ばれる限られた技術者のみが独占し、抹茶は富裕層が飲むものでした。庶民は路地に生えている茶の樹から刈りとった葉を日干しや釜煎りにして作った黒色の煎じ茶、今で言う番茶を飲んでいました。そのような時代背景の中、1738年(元文3年)山城国宇治の永谷宋円が、抹茶製法を取り入れた緑色で香味も優れた煎茶を完成させました。この新しい製法の茶は青製と呼ばれ、当時主流であった釜煎り茶や日干のお茶は黒製と呼ばれるようになりました。これは正しく日本オリジナルの茶で、世界中どこにもない茶でした。永谷宗円が創造した煎茶は宇治製法と呼ばれ、江戸の山本嘉兵衛の手で販売され、江戸の諸侯に大評判を取りながら普及していきました。

さらに美味しい煎茶を目指した宇治の茶師たちによって、この宇治製法を基に、覆下茶園の茶葉を使って誕生したのが「玉露」なのです。

誰が最初に「玉露」を考案したのか、ハッキリした史料はないのですが、通説では1835年(天保6年)江戸の茶商山本嘉兵衛が最初に考案したとされています。


4.玉露の名の由来

「玉露」は、先ほども申しましたように、世界中どこにもない日本オリジナルの宇治煎茶製法に、やはり日本独自の覆下栽培茶をミックスして作り上げた煎茶の最高峰です。抹茶とともに、日本が世界に誇る茶の芸術品といえるでしょう。

茶の故郷である中国湖北省の中国蒸青緑茶(じょうせいりょくちゃ)の代表的な銘柄茶に「恩施玉露(エンシーユイルー)」があります。その起源は中国古来のものと思われていましたが、実は日本の茶業者が現地に伝えた日本の玉露製法であることが分かり、面目を新たにしました。

さて、「玉露」の名の由来についてですが、明確な史料がありません。よって3つほど説を紹介することにしましょう。ひとつめは、山本嘉兵衛が碾茶を作っている時、小さな玉の様な固まりが出来た。これを飲んでみると非常に美味しかったので「玉の露」と名付け江戸で販売したという説。ふたつめは宇治の江口守十郎が「玉の露」を「玉露印」として販売したという説。みっつめは「上林種太郎家文書」に丸く固まった茶を飲んだら甘露の味がしたので「玉露」と名付けたという説です。


5.旨い茶「玉露」

「玉露」は通常の煎茶と比べてテアニンがとても多く、このテアニンが玉露の旨さの素です。テアニンを効率良く煎出するには、約60℃のお湯でじっくり淹れること。これが玉露本来の美味しさを楽しめるコツですよ。

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福岡県星野村の「茶の文化館」を訪れた折にいただいた「しずく茶」は、実にすばらしく玉露の美味しさを堪能することができました。「しずく茶」とは、玉露の飲み方のひとつで、天の星からでる雫を味わうことになぞって「しずく茶」と名付けられたそうです。蓋付きの湯呑に玉露を入れ、十分湯冷ましたお湯を茶葉が浸る程度にいれます。蓋をずらし、天を仰ぐように玉露のしずくをいただきます。数回いただいたあと、その茶がらに酢醤油をたらして食するのですが、これまたすばらしい!の一言に尽きました。みなさまも是非、試してみてはいかがですか?

何はともあれ、気ぜわしい現代社会の癒し茶として「玉露」をおすすめしますよ。


資料

  • 「中国茶の魅力」谷本陽蔵著 柴田書店発行
  • 「中国茶の文化史」布目潮【フウ】著 研文出版発行
  • 「緑茶の事典」(社)日本茶業中央会監修 柴田書店発行
  • 「中国 名茶紀行」布目潮【フウ】著 新潮社発行
  • 「お茶からアジアを考える」(財)静岡総合研究機構編著
  • 「生き物文化誌 ビオストリー2号」ビオストリー編集委員会編集 生き物文化誌学会発行
  • 「日本の茶・歴史と文化」吉村 亨・若林英弌著 淡交社発行
  • 「緑茶通信5・6・8号」世界緑茶協会事務局編集発行
  • 「一杯の紅茶の世界史」磯淵 猛著 文芸春秋発行
  • 「日本茶の自然誌」松下 智著 愛知大学総合郷土研究所編集 あるむ発行
  • 「茶の大事典」発行者 窪川雄介・福島敬一 「お茶の大事典」刊行会発行
  • 「日本茶業発達史」大石貞夫著 (社)農山漁村文化協会発行
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